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セクション5 プレイヤーとその諸問題
第19章 ゴルフにおける「曲がる」ショット 不適切な箇所での打撃
もし良いショットを生み出す能力が、そこに必要な基本的なプロセスの専門的知識と、その正しい理解に裏付けされているならば、本章の、ゴルフにおいてショットが不適切に「曲がる」ということについての考察を読了すべき読者はごくわずかなはずである。しかし実際にはボールは曲がる。それもいとも簡単に。にもかかわらず、多くのゴルファーは悪いショットの背景に存在しているメカニカルな要素について漠然とした考えしか持っていない。
実はボールが意図しない方向に「曲がる」基本的な原因は三つしかない。それぞれが単独で作用する場合もあれば、多くの場合は他のものとのコンビネーションで発生している。
その三つの原因とは以下である。
- オフセンターインパクト。ボールをクラブフェースの中心(スイートスポット)以外で打撃している。
- オフラインスイング。クラブヘッドがボールを打ち抜くときに、その軌道が狙ったライン以外の方向に作り出されている。
- フェイスオフライン。クラブヘッドの軌道と、インパクト時のクラブフェースの向きが異なったラインでボールが打撃されている。
我々ゴルファーが他のどんな思い込みをしていようとも、実際に「曲がった」ショットを打つ方法は上記の三つしかない。
究極の恐怖: 完全なミスショット
まずはじめに、オフセンターインパクトの極端な例から考えて見ることにしたい。例えば空振り、ダフり、完全なトッポ、シャンク、トゥの方向に飛ぶショット、ヒールショット、トップエッジでのショット(テンプラ)などがある。それらは全て詳細な調査を必要としないほど単純明快かつ完全に悲惨な結果をもたらす。それらの発生順序、組合せおよびバリエーションは、コンピューターをもってしても予測困難なものとなる。
これらは全て、プレイヤーがバックスイングの開始時にクラブをボールから引き始めた位置から遠く離れた位置にクラブを下ろしてきた結果であり、そのためインパクトがクラブフェースのセンターで行われないばかりか、クラブフェース上で行われないことすらある。
ツーレバーシステムの概念から説明すれば、これらのショットの最も可能性の高いエラーとしては、スイングの最中にハブが動きながらインパクトに向かうということであり、そのためクラブがボールに対してアウトサイドに向かえばヒールショットあるいはシャンクになり、インサイドに向かえばトゥでのショット、上方に逸れればトップあるいは空振り、下方にそれればテンプラやダフりと言った結果をもたらす。
図 19:1 は、ダウンスイング中にハブが上方に持ち上げられたときに何が起こるかを示したものである。結果は完全なミス (空振り) または完全なトップとなる。類似の方法で頭をかがめるようにすればダフりを生成し、前方、あるいは外側にスウェイを起こせばシャンクを生成する。
19:1 モデルを使った「空振り」の説明。このような完全なミスショット(ここまで極端ではないにせよ完全な「トップ」なども含め)の最大の共通した問題点は、ダウンスイングの最中にスイングの「ハブ」そのものを持ち上げてしまうことである。これにより当初構えていた地点よりも大幅に高い位置をクラブヘッドが通過する。ゴルファーはこれを「ヘッドアップ」として認識している。
もちろん、これは現象を極端に単純化し過ぎており、つまり一般的にこうしたミスショットを行うプレイヤーは、複数の側面からモデルスイングから逸脱しており、とりわけ下方のレバー、つまりクラブを外側に振り出すタイミングを間違っている可能性が非常に高い。しかしどのようなミスショットが起きていようとも、これら恐怖の主な原因は、ハブの動作の失敗であると指摘してほぼ間違っていないだろう。
写真 (図 19 : 2、19 : 3 および 19 : 4) は、これらのミスショットのいくつかの生成の瞬間を写真に収めたものである。そのような瞬間にゴルフボールがどのようになっているのかを知るという点で、独特の興味を覚える読者もいるだろう。
19:2 ドライバーによる完全な「トップ」ショット。クラブのエッジがボールの上方に包み込まれるようにボールが変形し、この結果ティーペグのすぐ前に打ち出されることとなる。
オフセンターインパクト:単純なねじれ効果
GSGB研究プログラムにおいて最も興味深く、また重要な発見の一つに、インパクト時、クラブヘッドはあたかもプレイヤーとシャフトでつながっていることが信じられないほどに自由に動作するということである。その理由と、そのことが意味する重要性については22章にて議論することとする。現時点でこのことが意味するのは、ボールをクラブフェースの中心から外れた場所でインパクトをする際の影響に関しては、クラブフェースとボールにどのような反応が現れるかのみを研究すればよいということである。つまりシャフトは無視してよい。
インパクト時、ボールは、クラブヘッドが時速150マイルの初速でボールを飛ばそうとするエネルギーに強く抵抗する。前方に飛び出す前に、フェースの上で潰れるほど強い抵抗を行う。通常時のゴルフボールの硬さを知っている読者であれば、ここで発生しているエネルギーがどれほど大きいものであるかは想像がつくはずだ。一般的なロングドライブでは、インパクト中にクラブフェースがボールに伝えるエネルギーは0.5トンを超える。
もしこのエネルギーが。クラブヘッド重心上にあるクラブフェースの中心からボールに伝えられたのであれば、クラブヘッド速度はインパクトで相当の減速を迎えるが、フェースが捻れる、あるいはその軌道のバランスが崩れるといったことは発生しない。これが完璧に打撃されたゴルフショットのインパクトの最中に発生していることだ。
しかし、その代わりに、インパクトがクラブフェースの重心から遠く離れたクラブフェース上で行われればどうなるだろうか。クラブヘッドの減速量は減るかわりに、クラブヘッドは打撃と同時に回転しフェースの向いている方向も変化する。これがボールがオフセンターで打撃された際に実際に起きていることである。
実例を挙げよう。「薄い当たり」のとき、両手には刺すような痛みが走り、ボールは低く飛び出して意図していなかったハザードに吸いこまれる。このときに起きたのは、ボールがクラブフェースのセンターよりも下方でインパクトされ、インパクト中にクラブヘッド軌道に対してクラブヘッドが下方を向くように回転したということである。結果としてクラブフェースのロフトが減少し、ボールの打ち出し角度が減少して低いボールになると同時に、与えられるはずだったバックスピンも減少する。
19:3 アイアンによるトップショット。インパクトの瞬間とボールが地面にめり込むまでをダブルフラッシュという手法で撮影している。ここまでにのトップになると、ボールがそれまでの状態を復元することはない(交換が必要)。
これらの効果が複合して、あるいはそれ単体であるとしても、飛球が低くなる傾向をもたらす。しかしこれらは通常は別の効果にもさらされる。ボールとクラブフェースがフルショトにおいて接触している面積は、おおよそ円形で、通常の平面のフェースの場合、1〜1.25インチほどになる。クラブフェースの上端からエッジまでの距離は1.5インチほどしかないので、フェースの中心から0.25インチ以下の場所でボールとの最初のコンタクトを迎えた場合、クラブヘッドのコンプレッションが最大になった時点でボールはエッジを包み込むように変形する。この事実もまた飛球が低くなる効果をもたらす。ボールがエッジを包み込む度合いが大きくなるほど、ショットが「薄い」当たりになる。そしてボールの半分がエッジを包み込む程までになったら、それが完全な「トップ」ボールになるということである。