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スイングには精神的にも肉体的にも「型」はない
反復練習の必要性の重要度を強調したいっぽうで、我々は練習野債に全く同一の固有のスイングが何度も同じように繰り返されるよう努力しているわけではないことも理解しておく必要がある。つまりスイングは一つのメモリのトレース(あるいは回路)によって開始され、ついで一つの神経経路によって誘導され、特定の筋繊維のセットによって実行されているといったことだ。
現実にはこうしたことが機能しているわけではないのだ。第一に要求されていることが完全に同じスイングといったものが二つと存在するわけではない。ゴルフコースの自然は、傾斜、ライ、芝の密度や地面の固さなどは常に異なる。全く同じ場所から打ち直しをする場合でさえ、ゴルファーは全く同じようにセットアップすることができるわけではない。
熟練したプレイヤーはそうではないプレイヤーと比較して遥かに再現性の高いセットアップを行うが、結果として得られるショットが指し示すことは、彼らであっても常に完璧な再現性を伴うわけではないとうことだ。実際にはゴルファーの脳は、常に前回のショットとは微妙に異なる状況にさらされており、もちろん全体的なスイングのメカニクスがほぼ同一であるとしても、精神的にも肉体的にも毎回同じスイングを行えるわけではない。
そしてこの問題は神経系統と筋繊維にわずかな変化が生じるということに留まらず、生理学的な問題でもある。完全に同じプロセスを繰り返し実行させようとすることは疲労と、最終的には関連する器官の消耗をもたらす。
従い、ゴルフスイングを行う際に、以下三つの要素の全てに変化が生じるが、それは記憶回路(実際にはあらゆる状況に対応して異なる回路が存在する)、神経系統、筋繊維群である。実際には、我々が知りうるゴルフショットの種類は非常に広範である一方、同じショットを行うための、ほんの少し外見上の違いがあるだけの、代替的な方法を開発することにも十分な可能性があると言える。
なぜ練習するのか?
こうしたことを理解することで、我々は「練習」の目的の本質に到達する。これは一部の読者諸君にとっては驚きかもしれない。つまり、スイングを「型」にするのではなく、ほぼ同じスイングが行えるようにするための代替的「ルート」を複数構築するということであり、それによって全てにおいて完璧と言えるわけではないが、ショットの結果としては受容可能なレベルのゴルフを生み出すということだ。プロが65のスコアでラウンドしたあとに4〜5回くらいしか完璧と言えるショットはなかったと言うとしても、間違った過小評価とは言えない。このプロは本章で前述されてきたことを日常的な言語で伝えているだけなのだ。
こうした理論的説明から、クラブをグリップする際にはナックルが二つ見えるべきか三つ見えるべきかと言ったことを導くことはもちろんできない。しかし他分野における研究から得られる結果と合わせ、練習に対する一般的な取り組み方を策定することには寄与する。
ゴルファーが広範な意味での「スイング」、つまりクラブを振るという段階に達したら、練習セッションにスイングのバリエーションと、難易度を上げていくことを慎重に導入していくべきなのである。そうすることでプレイヤーは経験を増やし(記憶のトレースのバリエーションを増やし)、受容可能な結果をもたらすショットの、神経回路および筋肉の代替的ルートを開発していくことができる。
例えばこのプレイヤーが、片手でショットすることを試みるかも知れない。これにより手と腕の筋肉の構築に追加の利点を受けられるかもしれない。あるいは6番アイアンで「エクスプロージョン」のバンカーショットを試してもいいし、一本脚または両足を揃えた状態でフルショットを試みてもいい。困難なライや傾斜地からの練習は有効であるし、フック、スライス、ハイボール、ローボールを意図的に打つことも同様だ。慢性的なスライサーでさえ、意図的に大きなスライスを打とうとすることの難しさに驚くかも知れないし、少なくともある高名なティーチングプロは、「ひとたびゴルファーが意図的にシャンクすることを学んだならば、意図せずにシャンクすることは二度とない」とも言っている。
こうした練習の種類でもうひとつ有効なのは、通常であれば6番アイアンを使用するようなショートホールで、5番、4番、3番、2番アイアンに、果てはスプーンを使用してみるというものもある。
読者諸君は、間違いなくこれよりももっと沢山のエクササイズについて考えることができるはずだ。ただしこれらの練習は初心者向けではなく、既に自身のスイングを十分に確立しているプレイヤー向けであることを忘れないことだ。より厳密に言えば、こうした練習は、一連の同様の精神的、生理学的プロセスによって、ほぼ毎回同様の結果を生み出せるプレイヤー向けのものである。初心者がこうしたボリュームのバリエーションを練習に導入すれば、混乱が生じるだけである。
練習における自身の目標を設定する
これは従来のゴルフストロークの練習に価値がないと言っているのではない。むしろ逆である。しかしプレイヤーは、自分が練習によって何を達成しようとしているのかを正しく認識している必要がある。精密な目的のない練習は、少なくともスイングには悪影響を与える可能性があるが、筋肉の強化に役立つくらいのことはあるだろう。
これらのことに異を唱える人は少ないだろう。しかし多くのプレイヤーが特にこれと言った目的を意識せずに練習をしている。これまでに述べてきたやや型破りな練習と比較して、一般的な練習というのは極端に明確な目標を提示しているものではなく、練習用のボールの入ったカゴを持って単にぶらぶらするだけの状態になってしまうこともある。
あらゆる練習セッションにおいて、何をしようとしているのかを自覚しているだけではなく、達成すべき明確なゴールを持っているべきであり、それは自分自身で設定した数値的な目標である。もしプレイヤーが自身のスイングがボールを意図したラインに打ち出せるよう機能していることに満足しているならば、ゴールは非常にシンプルなものになる。例えば5番アイアンでピンを狙い、50%の確率で15ヤード以内に寄せるといったことである。少なくともこの方法で進歩の状況をチェックすることはできるはずだ。本書の28章から31章にかけては、プロゴルファーによって達成されている、ゲームの様々な部門におけるスタッツ(基準)を紹介している。読者諸君はそれらを自身のゲームの改善のためにアレンジして使用することが可能だ。
ドライバーを練習する際には、平均飛距離と、その拡がり、つまり中央50%の縦の広がりと、同様に中央50%の左右に拡がりを記録しておくと有効である。つまり、20球ドライバーを打ったならば、最も左に曲がった5球と最も右に曲がった5球を排除し、残りの10球の左右の拡がりを計測する。この50%の「拡がり」は、プレイの正確性を測る上で、一球の極端な悪いショットの影響を可動に受けてしまう全ショットの「拡がり」よりも、より精度の高いプレイの尺度となる。
他分野のスキルを向上に関する研究からもわかることなのだが、これらを行うことで練習がより面白く感じられるだけではなく、練習におけるモチベーションや満足度をもたらすことにもつながる。
もちろん、こうした練習が実際に機能しない場合もある。スイングにおける障害を克服しようとすると、当初はそれ以前よりもショットが悪くなることがある。そこで目標を達成しようと性急になる結果、以前の方法に戻ってします、あるいは一時的な調整をしたりする衝動に駆られることもある。しかしこのような状況においてすら、スイング障害の克服に成功した場合であれば、何らかの達成すべき数値目標を設定することは可能である。こうした過程において、誰かしらの援助を必要とする場合もあるだろう。またどのような場合にせよ、誰かと一緒に練習を行うのは悪い考えではない。その誰かが何らかのアドバイスをしようと試みるのではない限り、専門家である必要はない。しかし自分のスイングについて、シンプルに「イエスor ノー」で答えられる質問を投げかけることは可能だ。
例えば「ダウンスイング中に頭が前方に移動したかどうか」は、プレイヤーの向こうにある木を見ていれば簡単に気づくことができるはずだ。一方で何か他のものを見たくなってはいけない。頭部を前方に動かさないことを確認しながら、最初の二十球は通常のスイングで、次の二十球はハードヒットで練習することができる。あるいは役割をスイッチしてもみても良い。これは双方にとって良いトレーニングになるはずだ。
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