シャンクの原因第二弾です。
想像してみましょう。フェアウェイから放った第二打が惜しくもグリーンの手前に止まってしまい、若干逆目のラフから登りのアプローチ。勇気を持って奥のピンになるべく突っ込みつつも上りのラインは残した感じでなんとか寄せてパーを取りたいという状況です。
ここでいろんな考えがアタマをよぎります。
・ライが悪いのできっちりクリーンにコンタクトしたい
・しっかり距離を出しつつスピンを利かせてピンそばに止めたい、もしくは
・しっかりボールの下に入れて柔らかいタッチで上から落として止めたい
とかです。
このようなことを考えていると、脳内に「ボールにしっかりフェースを当てたい」という危険な思想が充満してきます。
何度か素振りを重ね、振り幅は前後50cmくらい。ちょうど良い具合にバウンスがラフをこすっている感触、膝の曲げ具合を意識して、いよいよ打ってみます。
「ペチッ」
という絶望的な感触とともにボールは斜め45°に飛び出してガードバンカーに転がり落ちていく。まず思うのは
「あぅぁ、死にたい」
それから次第に恥ずかしさと怒りと「なんで、どうして?」「練習では出たことないのに」とかいろんな感情がごちゃ混ぜになってバンカーからも脱出できずトリプルボギー。。。
これが恐怖の
アプローチ(近距離ショット)シャンク
です。自分でも書いてて吐き気をもよおすアレです。
前回の記事では右のヒップが早い段階でしゃしゃり出てくるために両手の通り道がなくなってハンドアップしてシャフト側でヒットするシャンクを紹介しましたが、今回のようなケースではそもそもそんなにクラブを振ってないからヒップも動いてないし上のケースとは異なるわけで、前後50cmくらいしかヘッド動かしてないのになんで当たらねーんだよふざけんなって話です。
TGMでは「クラブを操ろうとするのはとっても危険なので、両手を操る意識で練習しないとダメよ」と言ってる(5-0-1)わけですが、上のような状況で「うまいことコンタクトしてやろう」と考えると、どうしてもクラブヘッドを操ろうという意識になりがちなわけです。さらに言えば綺麗にフェースを返したいとか余計な願望も出てくるわけです。で、今回はそうなると物理的にどのような現象が起きやすいかという話です。キーワードは「角運動」です。
ウィキペディアの説明は文系の私には理解不能ですので理解出来る人は読んでくださいな。
で、角運動が何かというと、要は中心を持って旋回する物体の運動ですね。
特徴その1:中心から離れるほど質量が増える
上の図でいくと、右の方が回転の中心からの距離が長いので、これを回転運動させるには左よりも大きなチカラ(回転力:トルク)が必要ということになります。
特徴その2:角運動量は保存される
仮に右の長いバージョンで角運動をしている物体が、突如左バージョンの半径の回転に変わると、球体の回転速度が上がります。つまり(ホントはもっと複雑な式だけど)
半径 × 球体の回転速度 は外部からのチカラが加わらない限り一定になります。
でこれをゴルフ的に応用するとどういうことが起きるかというと
左のゴルファーがヘッドを旋回させるのと右のゴルファーが同じ事するのでは、左の方が旋回軸からの回転体の距離が短いので、ラクに回せる(少ないトルクで振れる)ということになります。これはクラブ持ってやってみれば誰でもそうなると思います。極端な話、クラブを思い切りアンコックして(デシャンボーのように)両腕とクラブが一直線みたいな状態だと、フェースのターン・ロールが最も容易になるということになります。
ここで問題になるのは、もし右のような状態でヘッドを旋回させようとするとき、そこに投入しているチカラ(トルク)が、本来必要な角運動量に足りないとしたらどうなるでしょうか?
コック量を減らして(ハンドアップさせて)回転軸と回転体の距離(半径)を減らそうとする作用が働きます。だって角運動量は保存されているので、そうしないとストロークを進行させることが出来ません。逆に言えば、そういうことが発生しない(もっと遅い)リズムで振れば良いのですが、TGM的な言い方をすれば「クラブヘッド重心の感覚を喪失」してしまうと、その動きを無視したリズムになってしまうということです。
で、ここまでハンドアップさせれば、短いストロークほどヘッドの慣性が少ないのでヘッド軌道も外側に持ち出されてシャンクが完成します!
実はこのハンドアップという現象は、プロでもフルショットなるほどある程度は発生していて、ドライバーの動画を後方からよく見るとちょっとは発生しているのですが、ドライバーはそもそもボールと左肩(回転軸)との距離が長いので割合としては少なくなるのと、ヘッドの速度があるために慣性が働いて軌道がズレるのを防いでくれたりするわけで影響が最小化されます。そもそもドライバーはフェースにシャフトがないですし。
つまり短い番手で(影響が大きい)、小さめのショットで(角運動量が不足しがち)、きっちり球を上げようとしてしっかりコックなんかしちゃって(コックが解けがち)、そのくせしっかりフェースにコンタクトしようとして(ヘッドを動かす意識になりがち)、しっかりフェースをターンさせようとすれば、
角運動量不足ハンドアップシャンク!!
が出来る可能性が高くなります。
逆に
・なるべく近くに立ち(コック最小限になる)
・なるべくレベルに打ち
・なるべくフェースをターンさせようとせず
・ヘッドではなく両手の軌道を意識する
ようにするとアプローチにおけるシャンクの危険性は減ります。要はこれって
パットの打ち方ですね(笑)
ただこれは回避策であって、王道ではないと思います。
TGM信徒としての王道は、プレッシャーポイント#3を通じてヘッドの位置を常に監視下におき、その運動に見合ったリズムでストロークを出来ればヘッドが予想外の軌道になる事はないはずです。その上でスピンを入れたり、柔らかさを出したりということが出来ないとやっぱり困るわけです。
実はリズムの話をしたくてシャンクの話を出したわけですが、次はもっとリズムっぽい考察をしたいと思います。いわゆる「スイングが速い」という表現についてです。