ここのところ仕事もゴルフも自宅待機になってしまうことが多く、まぁそもそも収入激減するんでゴルフなんかやってる場合なのかはわかりませんが、ふとしたことから10周遅れくらいで「オーイ!とんぼ」を読んでみることにしました。正直ゴルフのマンガってそんなにマークしていなかったのですが、このマンガは私にはツボでした。というわけで今回は滅多にやらないステマ記事でお送りします。
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あらすじ
子供の頃に両親を交通事故で失った主人公、大井とんぼは、父方の祖父に引き取られ、トカラ列島(九州南沖の屋久島と奄美大島の間の列島)の島で生活を始める。持って行ったものは父の唯一の形見である3番アイアン。この島には手作りで作られた3ホールのリンクスコースがあり(実在はしません)、彼女はここを遊び場にして記憶の傷を負いつつも元気に成長する。
遊びのなかでとんぼは、ポットバンカーからのロブショット、防波堤からの海面水切りショット、強風のなか強烈な低弾道のショットなど、多彩なボールを3番アイアン一本で操る天才少女に成長していた。
とんぼが中学三年になったある日、その島へやはり過去に傷を持つ元プロゴルファーの五十嵐一賀(イガイガ)がやってきて運命的な出会いを果たす。イガイガの打つボールを見たことで初めてゴルフの世界が広がった少女はさらなる成長を求めるようになり、また五十嵐もとんぼの才能に惚れ込んで彼女とともに再びゴルフの世界に挑戦したいと考えるようになる。
ものすごくはしょりましたがこんなお話です。現在とんぼは高校一年で、最新刊では日本女子アマに挑戦中です。ちなみに3番アイアン一本だったクラブは、今のところ7本まで増えています。
ゴルフにある程度興味のある方(しかこのサイト来ないと思いますが)であれば、このマンガの名前くらいは知っていると思うのですが、今回実際に私が読んでみましてツボったところをまとめてみます。
技術的根拠のあるショットで話が構成されている
この手のスポーツマンガというのは、ともすると非科学的なスーパーショットに頼りがちです。古くは「巨人の星」の大リーグボールやキャプテン翼の「スカイラブハリケーン」などですが(古)、展開上奇跡のショットというのはある程度必要であるとは言え、最終的にピンチでそれやるなら「最初っから使えよ」的展開になりがちです。「スラムダンク」が名作になったのも、最後のシュートが一万本練習した「なんの変哲もないシュート」だったからで、あれが滞空時間10秒くらいの「前方3回宙返りダンク」みたいな必殺ワザだったら興ざめしたに違いありません。
またあらすじを見ればお分かりの通り、とんぼちゃんのモデルはおそらくセベ・バレステロスです。彼も羊の世話をしながら3番アイアン一本で遊びの中でゴルフを覚えた話は有名です。
このとんぼちゃんもセベ同様、ボールを自在に曲げ倒しますが、本人は遊びの中で開発したショットなのでそこに理論的な背景はありません。かのベン・ホーガンも「どういうときに何が起きるのかは知っているが、どうしてそれが起きるのかは知らない」と言ったといいますが、実際ゴルフ界では結構そういう天然プレーヤーって多い気がします。とんぼもその典型で、彼女のゴルフに型はありません。打ちたいボールがあるだけです。
ですが、とんぼや、そのほかのライバルも含めて、彼女たちのゴルフのショットにおける「なぜそういう結果になるのか」の説明がとても詳しく描写されています。とんぼ自身は天性の感覚でゴルフをしますが、周りで見ているイガイガ、ライバルプレーヤー、はたまた研修生のキャディなどがちゃんと技術的、理論的背景の説明役を果たしてくれていますので荒唐無稽な感じがしません。
また高いティアップで5Wを打って低いボールを打つ練習、あるいはウェッジのリーディングエッジで正確にボールの赤道をヒットしてミートの縦位置の精度を上げる練習など、実際にやってみようかと思うものも結構あります。もちろん原作者の「かわさき健」氏が元研修生ということもあって、結構ゴルフ脳を鍛えるのには真剣に良書なのではないかと思います。
そんなわけでこういう企画も可能なのだと思うのですね。
私個人はTGMという書籍とお付き合いして来て、まぁ「24個のコンポーネントのバリエーションとその組合せ」でほぼ無限のストロークスタイルがあるという面倒な研究をしてきても、やっぱり自分のゴルフになると「型」にはめ込んで単純化したいと思ってしまうことがよくあります。それ自体は悪いことではないと思いますが、求道のし過ぎで行き詰まったときは「いっちょ思い切り曲げてみよう」とかそういう遊び心も大切に違いないということを感じさせてくれました。
登場人物のキャラが濃い
例えばあるライバルは、ステージママならぬステージパパの絶対的な支配のもと、「もっとこうしろ」「どうして出来なかった」とかコーチングスタイルのコミュニケーションとかけ離れた環境の中でゴルフをしています。絶対あるんだろうなこういう光景って思います。そういうわけでお子さんにゴルフやらせてるお父さんお母さんにも読んで欲しいです。
またある選手はアメリカのゴルフ場で左足をワニに噛まれて、その左足に負担をかけないようにレフティに転向してスタックアンドチルトにするとか、両親が経済的に恵まれない中カプセルホテルで寝泊まりして遠征するとか、とにかく登場人物のキャラが多彩です。
まぁゴルフである程度のレベルを目指したとき、やはり経済的な側面って非常に苦しいものがあると思うのですね。いずれにせよ各ライバルはある程度自分の「戦う理由」を持っているわけですが、とんぼ自身はそこが天然なためにキャラの濃さが栄えるという不思議な構造になっています。
今後ライバルのインフレ(どんどん強い相手が出てこないといけない展開になる)がある程度進むとしても、まだ高校一年ですしね。日本アマで良い成績でプロのトーナメントの推薦かかるのもアリですし、プロテストの展開でもいいですね。もうプロテストなんて現実に韓国や中国、タイとかのトップ選手が受けに来てるわけですからどんだけすごい強敵が出てきても違和感はありません。
とんぼちゃんはナチュラルボーン「ヒッター」である
もうこれはTGM信者にしかわからないマニアックな喜びなのですが、とんぼちゃんは「ヒッター」です。
通常非力な女子が子供の頃からゴルフ始めてなんとか「飛ばしたい」と考えると「スインガー」になりやすいのですが、とんぼちゃんはヒッターなのです。それには理由があります。
一つは飛距離よりもより正確性が求められる島のリンクスコースで育ったことですが、もう一つ重要な理由として父の形見のクラブが「Jumbo MTN3」のマッスルバックの3アイアンでなおかつプレシジョン7.0という硬いシャフトが挿さったクラブでゴルフを覚えたからです。
ゴルフを始めた当時6歳のとんぼには、3アイアンは長すぎたのでアイスホッケーのようにスプリットハンドでボールを打つことを覚えました。結果現在でもベースボールグリップでゴルフをしているのですが、誰かに教えてもらわない限り、人間が本能的にゴルフを始めれば誰もインターロックとかオーバーラップとかにはならないですよね。
実は以前の記事で、理論的にはベースボールが最強かもということを書きましたし、TGMでは一貫して「ヒッターの方が正確性では明らかに勝るし、パワーで不利があるとは言えない」ということを言っているのですが、とんぼちゃんは天然でこの二つを達成していると言うことがTGM信者的には面白いわけです。
ちなみにとんぼちゃんがヒッターである理由ですが、上記のアイスホッケー打ちはヒッター手法であるという理由の他に、とんぼちゃんがよく使うドローの打ち方は、球を右足寄りに置いてフェースを閉じて握り直して打つということをしているからです。スインガーが右脚寄りにボールを置くときは、そのぶん回り込むようにオープンスタンスにしてフェースを目標方向に向けてフェードになります。つまりスインガーとヒッターではセットアップが正反対になるのですが、詳しいことは以下の記事でも読んでください。
いよいよゾーン2(両腕)の各コンポーネント説明に入るよーゾーン1とゾーン2が完璧なら一応「ストロークの3つの本質」と「ストローク3つの必須事項(フラットレフトリスト、ラグプレッシャーポイント、インクラインドプレーン)」はほぼ網羅されるから、余裕で80は切れるはずだよーってそうだといいなー7-1 グリップ - 基本グリップとは単にクラブをつかむと言うことじゃが、さらに両手の近接度合いによっておおまかに分類することが可能じゃ。すなわち両手はオーバーラップが可能になるほど近接しているか、あるいはオーバーラッ... グリップ - 大庭可南太の「ゴルフをする機械」におれはなる! |
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というわけでちょっとでも興味を持っちゃったならば以下のリンクから買っちまいましょう。私の場合バラバラに買ったもんでまだ第16巻だけ届いていないのですが、1巻〜最新巻の22巻までのセットもあるので、「どうせ全巻買うんだろうな」と思った人はそっちを買いましょう。
今日はこのへんで。