なんかデシャンボーの中東第二戦は6位だったらしいですけど淡々と行きます。
以下前回の内容
ゴルフは人類がクラブでボールを打撃することに始まり、そして終わる。
よって我々チームは、まず以下二つの、非常にシンプルではあるが注意を要する二つの設問を設定することから始めた。
- プレイヤーがゴルフボールに対してスイングを行う際、達成しようとしなければならない本質的な事項群は何であるか?
- それら事項群を成し遂げるために、ゴルファーが開発しなければならない身体的動作の本質的な構造とはどんなものか?
今回ここから
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良いショットに必要なもの
二つの設問のうち最初の一つは、科学者チームのゴルフについての、また物理、化学についての既存の知識から即座に回答が可能なものであった。この課題についての詳細は第19章、20章、22章、23章にて提示されているが、それらを要約すればあらゆるフルショットにおいてボールを真っ直ぐに飛ばすためにゴルファーに必要なことは、
- 目標に向けてクラブフェースをボールを貫通して真っ直ぐにスイングすること。
- 可能な限りターゲットに対してクラブフェースがスクエアである状態を保つことであり、少なくともスイング中にボールと接触している期間は保持すること。
- クラブヘッドをインパクトを通じて制御可能な限り速くスイングする一方、ストレートなショットを打つための前述二項目の要求事項を遵守できていること。
- クラブフェースの中心付近でボールをヒットすること。
これが全てである。上級者の場合、高いティーでフル・ドライブのショットを行う場合にはわずかにアッパー軌道でスイングを行う、もしくは6番アイアンでディボットを取らなければならないようなショットの場合にはわずかにダウン軌道でスイングを行うという事実はあるが、この事実はストレートショットを打つという命題に本質的な影響を与えるものではない。同様に、スイングの方向とクラブフェースのアライメントのバリエーションによってドローもしくはフェードを発生させる(あるいはダックフックや大スライスとなることもある)ことは、それが意図的であれ意図しないものであれ、特別な目的のショットのために本来そのゴルファーが活用可能であるボールを真っ直ぐに打つ技術を応用しているということに過ぎない。そのゴルファーが行おうとしていることの全ては、標準的なショットにおいては、ボールを強く、真っ直ぐに、スクエアなフェースで打つということだけなのだ。
ここまでの議論は全てのゴルファーにとっての共通の着地点であり、何ら問題はない。
しかし上記の単純かつ明白な要求事項ですら、仮説を設定する段階ではにわかにその主張の自信が失われ始める。そして第二の設問、すなわちスイングそれ自体がどのように機能しているのかという問いに対しては、単に表面的に発生している事項群、もしくは我々がゴルフのプレイにおいて経験している副次的な感覚の数々をもってもしても回答することが困難になっていくのである。
それら議論の拡散を避けるために、我々のチームではゴルファーがクラブをスイングし、ボールを打撃する際に起きている事実の膨大な量のデータを収集することを決めた。プロジェクトの方針をまずこのように定めたことによって、ゴルフの基本的な事実群をかつてないレベルで包括的に収集することが可能となった。
これらの事実群は、それ以降の体系的な分析および仮説設定の重要な基礎部分であるため、またそれらに興味を持つ読者のためにも、チームの研究が詳細に進む前の段階でのそれら事実群のいくつかを最小限簡潔に説明することにする。
以下事実群は、我々科学者チームがゴルフスイングを構成している主要な要素として注目したものであり、それらはコース上で、またボールを打撃する際に発生しているものである。
パワー
ダウンスイング時、ゴルファーは最大四馬力のパワーを出力する。これは驚くべきパワーであり、少なくともそのためには30ポンド(約13.6kg)の筋肉が最高出力で使用されることが必要となる。この数値は、間接を稼働させる筋力だけでは出力出来ないものであり、両腕や両手の筋力よりも両脚や胴体の大きな筋肉を使用することがトップクラスのプレイヤーのボール打撃に必須であることを裏付けている。
インパクト
時間:ドライバーのフルショットにおいて、フェースがボールに接触している時間は、0.0005秒である。
距離:ドライバーのフルショットにおいて、フェースがボールに最初に接触してから再び離れるまでに動いている長さは3/4インチ(約19mm)である。
フォース:ドライバーのフルショットにおいて、インパクト中にクラブヘッドによって作られるフォースは最大で2000ポンド(約907kg)、つまりほぼ1トンである。またインパクトの0.0005秒の間中に活用される平均的なフォースの量、つまりボールが圧縮された後に再びその形状を復元して飛んでいくまでの総量はおよそ1400ポンド(631kg)である。この時間、距離、フォースはブリティッシュサイズ、アメリカンサイズのボールとも同じである。
イギリスとアメリカでは使っているボールのサイズがこの時代は違っていたんですね。
1.1 ドライバーのインパクト。クラブフェースがボールに接触してからわずか3/4インチ移動した後、ボールはフェースから離れて空中に飛び出していく(一番下の図)。またこの際、最初にボールに接触した際(一番上の図)の打音はプレイヤーの両耳に向けてはまだ6インチしか進んでいない。
「感覚」の伝達にかかる時間
インパクトの衝撃がクラブフェースからシャフトを通じて両手に伝達されるまでの時間はおよそ0.00066秒である。この時点で、ボールは既にクラブフェースを離れておよそ半インチの位置に到達、つまり飛び立っているが、両手は依然としてストロークの「感覚」を持ち続けている。さらにゴルファーの脳にその情報が伝達し、「感触」に対して反応ができる状態になるまでにはさらに少なくとも0.001秒かかる。この時点ではボールは左足もしくはそれ以上遠くに飛んでしまっている。またそこからストロークに対して何らかの変更を加えるためにゴルファーの脳が両手に指令を出すことが出来るまでにはその約5倍の時間(0.2秒)が必要となる。この時点ではボールは既に15ヤードほど前方を飛んでいるので、ボールの衝撃に対して何らかのアクションを加える事が不可能であることは明らかである。
スピード
ダウンストロークの最中にトップクラスのゴルファーがクラブヘッドを加速できる能力は、目下最高速のスポーツカーが加速できる能力のおよそ百倍である。バックスイングのトップからインパクトの時速160km/hの速度に到達するまでにかかる時間はわずか0.2秒である。時速160km/hで移動するドライバーのヘッドは、通常の重量である7オンス(198.5g)のヘッドを用いた場合、トップクラスのゴルファーのボールを最大時速216km/hに到達させることができる。もしこのヘッドで時速320km/hの速度でスイングされた場合、ボールの速度は最大で400km/hに到達する。(単純に二倍にならないのは、すべてのゴルフボールはインパクトのヘッド速度が大きいほどエネルギーが吸収される割合が増えるからである。)
重量
科学的な法則群を用いて計算した結果わかることは、より重いヘッドを同じ時速160km/hの速度でスイングした場合、ボールの飛距離はその重量の増加に比例したものにはならないということである。通常よりも二倍ほど重い14オンスのヘッドを用いた場合、ボール速度は最大で240km/hほどになる。さらに重い16オンスのヘッドを用いたとしても、そのボール速度は最大で264km/hほどにしかならない。実は10,000トンのヘッドを同じ時速160km/hの速度でスイングしても266km/hほどしかボール速度は得られない。
一方で重量を減らすということは、その減少に比例した速度の増加を得られるわけではない。ゴルファーはクラブヘッドに加えて、クラブシャフト、その両腕、もしくは身体の他の部分も同時にスイングしなければならないため、クラブヘッド重量が10%減少したとしても、ヘッドスピードは2%しか増加させることが出来ない、とはつまり、ほとんど飛距離の増加は得られないということになる。結果としてこのことは、クラブヘッドの重量にかなりのバリエーションがあるとしても、同じプレイヤーであればボールをスクエアに捉えた際の飛距離に大きな差が出ないことを意味している。よってどのような重量のクラブヘッドを選ぶべきかについて言えば、そのゴルファーが再現性を確保出来る実用的なスイングをしている範疇において、個人の特徴およびその才能に対して、最も重量とスイングスピードのバランスが取れていると感じる重量がどれくらいであるのかが重要ということになる。
飛距離
明らかに、ロングドライブを行うということは、クラブヘッドをより速いスピードでスイングすると言うことが必要となる。例えば、地面にバウンドするまでに280yのキャリーが必要である場合、プレイヤーは初速280km/h(77.77m/s)でボールを送り出す必要がある。これを行うために必要なヘッドスピードは以下である。
6オンス(170.1g)のヘッドの場合 :59.55 m/s
7オンス(198.5g)のヘッドの場合 :57.77 m/s
8オンス(226.9g)のヘッドの場合 :56.44 m/s
温度
ゴルフボールは冷たい状態より温かい状態の方が飛ぶ。キャリー200yを気温21℃の環境で飛ぶボールは、気温ゼロ℃では185yしか飛ばない。
TGMでも同じなんですが、英語圏は基本マイル、ポンド(オンス)表記なのでメートル、グラムに直してます。
注意深い記述ではドライバーヘッドの重量を増やしても飛距離にはほぼ影響しないという話で、現実的に今売られているドライバーヘッドの重量はほぼ195gから205gの間のものしか存在しない(ソースはPCM筒さん)ということなのでその主張が裏付けられることになります。よって鉛を貼ろうがカチャカチャしようがウエイト可変だろうが、振り心地や出玉のスピンに影響はあるかもしれないとしてもヘッドスピードは変わらないということになりますね。
まだ途中ですが長くなりますのでいったん切ります。
追記:2019年1月は9名の方にTGM日本語版をお買い上げ頂きました。誠にありがとうございます。これで累計販売部数は15部になりました。