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第十八章 指導、学習、または練習について(1)

前章の内容は、もしかすると読者をして、いったいどのようにすればゴルフを着実に学ぶ方法にたどり着けるのかという不安を与える内容だったかも知れない。この問いに対する科学的な解答を求められるならば、答えは「未だ解明されていない」というのが正直なところだ。しかし事実だけを見れば、300ヤードものドライブを驚くべき安定感でショットするプロがいくらでも存在する。つまりゴルフを学ぶことは可能である。何らか野方法で人々はゴルフを学んでいる。

ティーチングプロは、初心者を教える際にいくつかの問題に直面している。一つは、生徒が初回、もしくは二回目のレッスンで進歩を感じられない場合、その生徒は戻ってこないかもしれないということである。生徒を満足させるという点において、そのプロは少なくともレッスンの一部において、彼の理想とするティーチングを放棄しなければならないこともある。ゴルフのプレイを学ぶ手順は、長く、フラストレーションの溜まるものであり、そこの幾ばくかでも進歩を確認したいという願望を抱えることは自然なことである。しかし、もしその生徒がラウンドにおける即効的な進歩に固執せず、当初から基本的な技術を一つ一つ構築していくだけの忍耐力をいささかでも持っているならば、長い目で見ればその生徒はより多くのものを手にすることだろう。

初心者はどのように着手すべきか

では初心者が有能なゴルファーになるためには、どのように着手していくべきなのだろうか。

第一に彼は、ゴルフというスポーツにおいて彼がクラブヘッドを使って、ボールに対して何をしなくてはいけないのかを正確に理解しておくことが必要である。すなわち、(a)ターゲットに真っ直ぐに(b)意図する飛球線にフェースをスクエアにした状態で( c)できるだけ速い速度でクラブヘッドを動かす必要がある。

第二に、そのようにクラブヘッドを動かすことをどのような方法で試みるのかについて、一般的な方法で知っておくことは役に立つはずだ。たとえば、モデルの概念を平易な言葉で理解しておくこと、あるいはもっと良いのは、ゴルフのプレイに必要な機能を、シンプルな機械的構造として理解しておくことである。次に、彼は可能な限りの上級者のプレイに振れて、良いプレイヤーのタイミングや調整についての全体的な印象をイメージしておくことである。

そしてついに、彼はゴルフクラブを手にすることになる!特にそうしない正当な理由がない限り、最初はスタンダードなグリップとスタンスを使用するべきである。しかしゴルファーとしての経験を積むにつれて、もし妥当と考えられる基準に達したのであれば、他のグリップやスタンスを試すのもよいだろう。

学習の初期段階では、専門家のアドバイスを受けることが重要だ。他のスキルに関する研究では、運動を実行する初期の試みが後の進歩にかなりの影響を与えることが示されている。特に、最初の試行が正しくない場合、結果のメソッドを「学習解除」することは困難であり、さらに正しいメソッドからの乖離がごくわずかである場合はさらに困難となる。ある程度の習熟を迎えるまでは、普段の習慣的な動作とは大きく異なる動作を学ぶことのほうが、わずかに異なる動作を学ぶことよりも簡単なのである。

ジュニア—別のアプローチが必要か?

おそらく成人のゴルファーにとっては、上記のように専門家のアドバイスおよびレッスンを受けることが、できるだけ短期に相応の技術を身につけるための最善の方法と思われる。しかしある程度時間的余裕がある場合、とりわけジュニアにとっては、正式なレッスンという形ではなく、ゴルフクラブとボールを使って遊んでみるというのが最善の方法かもしれない。試行錯誤の過程で、各個人は自分に合った方法を自分で見つけることだろう。そして、この期間に優秀なプレイヤーのゴルフを見る十分な機会が得られれば、過度に基本を逸脱したスタイルを身につけてしまう可能性も低くなるだろう。

今日まで英国では様々な素晴らしいゴルファーが誕生してきたが、彼らは多くの場合このような方法で育ってきたように思える。彼らはぞんぶんに柔軟性のある幼少期からゴルフに触れる機会に恵まれ、絶え間ない練習とプレイを繰り返すことで、ゴルフクラブを取り扱うことが、我々がナイフとフォークを使うのと同じくらい簡単になるほど習熟してきたのである。

指導と学習における諸問題 

ここで、ティーチングプロが初心者に教えていく場合の問題について考えて見ることにする。

ほとんどのティーチングプロは、実際にスイングを見ればその善し悪しを判断できるだろうが、全てのステージにおいて何が起きているかを正確に把握することはできていない可能性がある。これはティーチングプロへの批判ではなく、スイング動作の全体的な印象を得る以上のことを求めるには、人間の目にとってゴルフスイングがあまりにも一瞬すぎるということを言っているに過ぎない。

また、前章でも述べたとおり、上級者ほど自身のスイングを完全に一つのユニットとして捉えているために、生徒がどのように感じるべきかについて説明を行うことは非常に難しい可能性がある。生徒は自身の経験を通じて良いゴルフスイングのフィーリングを獲得していく必要があり、プロはこの過程においてそれを援助することに最善を尽くすのみである。良いティーチングプロの証とは、彼が生徒に伝えたいことをいくつもの異なる方法で表現し、いつしかそのどれかが生徒にとって「ハマる」までコミュニケーションを続けられることである。いっぽう、これはゴルフのティーチングにおいて、多くの明らかな矛盾を発生させている源でもある。

あるプロがダウンスイングの初動は左カカトを地面に戻すことであると言い、別のプロはクラブを左手で引っ張ることであると言う場合、それらは必ずしも互いに矛盾しているわけではない。彼らはそれぞれの生徒に、左カカトまたは左手がダウンスイングを開始したことを「感じて」みる価値があることを示唆しているだけかもしれない。しかしエンドプロダクト(正しいダウンスイング)は、どちらの場合も同じになるだろう。

一部のティーチングプロは、彼らが教えることの文字通りの真実を信奉している。例えばダウンスイングの最初の動作は、まさに左手で引くことであるという具合だ。一般論からすれば、彼らは自分たちが実際にやっていることを生徒に教えたいと考える人達である。もちろん、ダウンスイングの最初の動作というものは存在しなければならないので(実際にはそれはヒップの動作であると思われるが)、場合によっては彼らのやり方が功を奏することもあるだろう。しかし生徒がプロのやり方をそっくり知ることが常に有効というわけでもない。

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